現場編1 【 日本ではハイレバ・フルローンは馴染まない?? 】

10年位前の事です。
ベストセラーになった『鐘餅○三、便棒○算』作者ロバート秋山?? を読んだ時に、
日本でこの手法は難しいなぁと思ったものです。

その理由は、アメリカと違って日本では個人向けのノンリコースローンがなく、
リコースローンのみだったからです。

おおざっぱな説明で恐縮ですが、アメリカのノンリコースローンの場合、
融資の返済が出来なくなったら物件が取られておしまいで、それ以上の財産には遡及されないのです。

ところが、日本のリコースローンの場合は返済が滞ったら大変です。
最悪の場合、身を滅ぼし復活出来なくなるのですから、最悪の事を考えて借りねばなりません。

なぜなら、日本では、ローンの返済が出来ない場合は、物件はもちろんの事、
自分の他の財産や連帯債務者(保証人)の財産を売却してでも金融機関に返済せねばならないからです。

また昨今のようなデフレ経済下では、不動産市況も悪く、物件の売却額は借金残高に追い付かず、
物件を売ってもかなりの借金は残り、債権者からの請求はその後も続きます。

また完全に借金債務から逃れたければ破産する、と言う選択肢もあるにはあります。
日本では破産したら、法律上は5年で復権出来る事にはなっていますが、
実際には、日本社会では一度破産した者に社会的信用は付与されず、実質やり直しチャンスは与えられないので、
敗者復活戦が許されるアメリカとは社会的な背景が違うと思ったのです。

当時不良債権に関わり、任意売却実務の真っ只中にいて、
ローン破綻の売主と日々向かいあっていた私には、当然大変リスキーな話にうつりました。

バブル崩壊後でローン破綻者の問題が連日報道されていた頃でもあったので、
日本人はこんな無謀な事には、まさか手を出さないのでは、と思ったものです。

ところが、状況はそれから数年で一変します。

その後、不動産市況が活況を呈し、ファンドのミニバブルが起こり、
それにつれて、個人の不動産投資家の動きも活発になっていきました。

束の間のバブルで、会社の業績もそこそこ上がり、私も少々のぼせ上がっていたのでしょう(やれやれ)。
不良債権の実務をやっていた当時の事をすっかり忘れてしまっていました。

それで、危険な仕組みが分っていたはずの私でさえ、すっかり大事な事を忘れてしまっており、
なんとフルローンで物件を購入し、2億円に上る借金をすると言う愚挙に出てしまったのです。

不良債権処理のプロの私でも、のぼせ上がると、こんなリスキーな事をやっていたのです。

怖い事に、それが最良の事と信じ込んでおり、私自身も洗脳の真っ只中にいたのです。

さらに、その事を他の仲間にも伝えたりと、塾の初期には、カリキュラムがハイレバ寄りだったりした事もあり、
それに気付いた去年の夏前に猛反省をし、塾のカリキュラムを全て変え、今のスタイルにしたのです。

情報の発信者やリーダー的な立場にある人間の、ミスリードは許されません。
多くの人達に間違った情報を伝えるデマゴーグと化してしまうからです。

ただ幸か不幸か、自分の融資の返済期間は15年と10年の2本立てと期間が短く、
借金残高の減りは早く、このまま行けば債務超過にはならずに済みそうなので、 
少々ほっとしていますが、勿論最後迄何が起こるかわからない為、早くあと12年が過ぎて、
早く借金の返済を終えたいなぁ。」と祈るような心境なのです。

今はすっかり目が覚めたので、このようなリスキーな状況を長期間続ける事の良否は、
冷静に判断出来ますので、大丈夫ですが、このような普通の金銭感覚を、
これから不動産投資を始める方には、是非知って頂きたいなぁと思う次第です。

今は、賃貸経営におけるリスクが増大しています。
このような不景気下で、起こるリスクとは、

  • 空室リスク
  • 家賃下落リスク
  • 市場が無くなるリスク
  • 入退去にかかる費用(リフォーム・広告宣伝費用)が増大
  • 物件担保価値が下がり、追加の借り入れが困難 → 大規模修繕費用?
  • 敷金を使い込むリスク
  • 有利子負債の多い方に起こる債務超過リスク
  • 賃貸経営破綻リスク
  • 出口売却額が借金残高を下回るリスク → 投資家に逃げ場なし